第10話スチールa

それは、過去の出来事。11年前、グレアムが指揮する艦隊は、闇の書の停止に成功。

捕らえた主と闇の書本体を厳重に封印の末、しかるべき法的処置を検討するために留置空間へと護送中だった。だが、闇の書の護送を担当していた二番艦・エスティアは、闇の書の暴走のために艦を乗っ取られる。これまで吸収してきた生物の生体パーツに艦内は侵食され、艦と主砲・アルカンシェルのコントロールを奪われてしまう。エスティアの艦長であり、クロノの父・リンディの夫であったクライド・ハラオウンはクルーを避難させつつ、コントロールルームを守っていた。

そして、艦隊に向けてエスティアが主砲を放ってしまう前に、グレアムの艦のアルカンシェルで、エスティアごと闇の書を落として欲しいと申し出る。その言葉を最後に通信が途絶えるエスティア。

グレアムは苦渋の選択の結果、それに答えてエスティアを落とす。

その事件でクライドは帰らぬ人となり、その事件はグレアムの心に大きな影を残していた。

彼はいまも、その時の自らの作戦の甘さを悔いているのだった。

市街地の結界内では、闇の書の意志が完全に目覚めを終え、なのはたちに容赦のない攻撃をしかけていた。範囲内すべてを魔力爆撃するデアボリックエミッションから、ソニックフォームで防御力が落ちているフェイトを守るなのは。闇の書の意志は、涙を落としながらそれを見つめていた。

離れた場所で状況を見守る仮面の戦士たち。なのはたちと闇の書の意志を戦わせながら、重要な機会を待つ二人。だが、そこに現れたクロノの手によって二人は捕らえられてしまう。

強化や変身の魔法を解除するクロノのバインド魔法によって、二人の「変身」が解ける。

仮面の戦士の正体は、変身魔法で姿を変えていたリーゼロッテとリーゼアリアなのだった。

デアボリックエミッションを防ぎ、市街に隠れるなのはとフェイト。

フェイトはバリアジャケットをソニックフォームからノーマル状態に戻し、戦略を考える。

ユーノとアルフが合流するが、闇の書の意志は隠れたなのはたちを逃がさないため、封鎖領域を展開する。

本局に戻り、グレアムを捕縛するクロノ。リーゼたちとともに、事実の確認をする。

グレアムは闇の書の完全なる封印を望んでいた。完成前に破壊や捕獲しても転生してしまう闇の書を永遠に止めるためには、「闇の書の完成後」を狙うしかない。

完成から暴走が始まるまでの間に、主もろとも極大の凍結魔法で永久封印。そうすることでページの蒐集の必要のない闇の書は主を食い殺して転生することもなく、その活動を永遠に停止する。

運良く見つけることの出来た闇の書の主…はやての生活の援助をしていたのもグレアムだった。

それは封印とともに人生を奪ってしまうことへの贖罪なのだった。

だが、闇の書の蒐集と転生のシステムの穴をついたその作戦を、クロノは否定する。

暴走が始まるまでの間であれば、闇の書の主は永久凍結をされるような重犯罪者ではなく、その執行は違法であると告げる。法と正義の狭間で揺れ、怒るリーゼロッテ。そんな法のせいで、これまでもこれからも被害が続いてゆく。クロノの父・クライドもそれで死んでしまった、というリーゼロッテをグレアムはたしなめる。
 
クロノは、たとえ凍結しても、永久封印にはなりえないとも告げる。

どんなに隠しても、力を求めるものがいつか闇の書にたどり着き、氷の封印を解いてしまう。それはかつて、フェイトの母プレシア・テスタロッサが、愛娘アリシアの死を覆すために約束の地アルハザードを目指し、そのためにロストロギア「ジュエルシード」にたどり着き、新たな悲劇を生み出してしまったように。

現場が心配なのでと退出するクロノを呼び止めたグレアムは、クロノに一枚のカードを渡す。

それはグレアムとリーゼたちが目指した「永久封印」の切り札…氷結の杖「デュランダル」の待機状態だった。

結界内では激しい戦闘が続いていた。ユーノとアルフのバインドをものともせず、なのはとフェイトのバスター・スマッシャーも受けきる闇の書の意志。そして射撃魔法ブラッディ・ダガーの狙撃を回避したなのはたちを、さらなる驚異が襲う。闇の書の意志のミッドチルダ式の魔法陣から生成されるそれは、なのはのスターライトブレイカーだった。

アルフはユーノを、フェイトはなのはを抱きかかえて、闇の書の意志から離脱する一同。

なのはがリンカーコアを吸収された際にコピーされた魔法。

かつてライバルだったなのはによって至近距離からの直撃を受けたことのあるフェイトは、スターライトブレイカーの危険性を理解していた。

そしてスターライトブレイカーの欠点である「チャージ終了までの間は移動ができなくなる」という事実も掴んでいたフェイトは、回避距離を取るために、全速での避難を選んだのだった。

だが避難する二人に、バルディッシュが「民間人が結界内に取り残されている」という事実を告げる。急いで救出に向かう二人。取り残されていたのは、なんとアリサとすずかだった。

なのはとフェイトは二人に気づかずに救出に赴いてしまい、正面から鉢合わせてしまう。

驚く一同だが、その時、闇の書の意志のスターライトブレイカーが発動する。

襲い来る魔力から、アリサとすずかを守るなのはとフェイト。

アースラからの転送魔法で、封鎖領域内の比較的安全な場所へと転送されるアリサとすずかだが、
なのはとフェイトは突然の遭遇に複雑な心境を抱く。万が一に備え、ユーノとアルフにアリサとすずかを守ってもらいつつ、闇の書の意志の元へと向かう二人。

事態を収束させるため、闇の書の意志に懸命に話しかけるなのはとフェイトだったが、
闇の書の意志は二人が自らを「闇の書」と呼ぶことに寂しさを見せる。

そして、自分はただ主の…はやての願いを叶えるだけだと告げる。

それは騎士たちを殺したなのはたちの破壊であり、世界すべてを「悪い夢」として消去すること。そう告げる闇の書の意志になのはとフェイトは反抗し、その願いを叶えることに涙をこぼす闇の書の意志を責める。

その願いは急な事態に混乱したはやての脳裏によぎっただけの願いであり、はやての真の願いはそんな所にはないはずであるということ。本当は闇の書自身も、そんな願いを叶えたくはないはずであること。そして闇の書の主であるはやては、自らの魔導書の言葉を、思いを受け取ることのできる、優しい子であること。 

それでも自らを「ただの道具」と称して、いつわりの願いを叶えることだけをこなそうとする闇の書の意志に、フェイトが怒る。かつての自分と、どこか重なる意固地さ。

ソニックフォームを発動し、思いを伝えるために斬りかかるフェイト。

だが闇の書の意志は、そんなフェイトの攻撃を受け止め、フェイトを「眠り」へと誘う。

そしてフェイトは、闇の書の内部に吸収されてしまう。

驚愕のなのは。闇の書の暴走は間近に迫り、街には火の手があがりはじめていた。

「すべては、安らかな眠りのうちに」   

闇の書の意志は、そうつぶやくのみだった。

 
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