第4話スチールa

早朝、八神家。いつものように早起きのはやて。

同じベッド、おそろいのパジャマで眠るヴィータを見て微笑み、車椅子に乗ってキッチンへと向かう。リビングで浅い眠りについていたシグナムとザフィーラに毛布をかけ、朝食の支度を始めるはやて。

同じ時間、なのはとフェイトもそれぞれの場所で、先日の敗戦を胸に、自らの魔法と向き合っていた。リンカーコアが回復しておらず、魔法弾の生成がうまく出来ないなのは。ロッドを手に、自らの武技を鍛えるフェイト。 

シグナムの目覚めとともに、八神家ではいつもの朝が始まっていた。

調理を手伝いに訪れるシャマル、寝坊してくるヴィータ。それはどこにでもあるような、賑やかで、温かな暮らし。「あったまるよ」とはやての差し出したホットミルクを手に、そんな「家族」の風景を見つめるシグナムだった。

なのはの通う、私立聖祥大付属小学校。転入の挨拶をするフェイトに、湧く教室。

一方、クロノは本局で捜査に協力しているレティと連絡を取りあい、グレアムが捜査に協力してくれていることや、グレアムの使い魔であり、クロノの師匠でもある「リーゼ」が、クロノに会いたがっていることを伝える。駐屯に設置した探査機器で、事件の捜査を続けるエイミィ。

ゆうべもまた新たな被害が出ていた。死者はないものの、なのはと同じようにリンカーコアを奪われた魔導師が十数名。そして異世界の原住生物までもがその餌食となっていた。

「闇の書」の性質について疑問を持つエイミィに、説明をするクロノ。

魔力蓄積型のロストロギアで、魔導師の魔力の根源となる「リンカーコア」を食い
そのページを増やしてゆく。

その全ページである666ページが埋まると、その魔力を媒介として破滅的な力を得る。

本体が破壊されるか所有者が死ぬかすると、白紙に戻って別の世界で再生。

次元世界を渡り歩き、守護者に守られ、魔力を食らって永遠を生きる。

破壊しても何度でも再生する、停止させることのできない危険な魔道書。

そんな闇の書による災害を停止するため、二人は捜査に対して決意を新たにする。

闇の書の、完成前の捕獲。そのために守護騎士たちを捕獲して、主を引きずり出す。
それが作戦の目的だった。

八神家では、はやての病院のつきそいに出るため、シグナムがコートを羽織っているところだった。ヴィータとザフィーラはすでに蒐集に出かけ、シャマルは部屋で一人、皆のためにカートリッジを作成していた。魔力と体力に負担のかかるカートリッジ作成をシャマル一人に任せていることを詫びるシグナムだが、シャマルは「バックアップが自分の役目」と微笑む。

一方、学校では授業も終わり、帰宅するなのはたち。

アリサ・すずかとともにフェイトはなのは宅を訪れ、美由希・恭也らと談笑する。

その間にクロノから入った連絡は、「なのはとフェイトは、要請するまでは普通に過ごしていて欲しい」ということ。

そしてレイジングハートとバルディッシュは、来週には修理を追えて戻ってくる…ということ。

そのころ、はやては病院で石田医師の診察を受けていた。

笑顔混じりののんびりした診察と、今後の治療方針の決定。

だがはやてが薬局に向かい、診察室が石田医師とシグナムの二人になった時、石田医師は真剣な表情でシグナムに告げた。

それは、かねてから説明していた通り、はやての足が原因不明の麻痺に冒されていること。

そして、その治療に際して、これからは入院を含めた辛い治療になってゆくかもしれないこと。

そう告げる石田医師に、シグナムはただ、静かにうなずくしかなかった。

アリサ・すずかと別れたなのはとフェイト。

なのはの部屋で、事件について話す二人。

フェイトはシグナムについて、なにか強い目的があるのではと意見する。

なのはも、彼女たちが闇の書の完成を目指す目的を知りたいと思っていることを告げるが、
「話が出来そうな雰囲気じゃなかったし…」としょんぼりする。

フェイトがかつてなのはと同じ目的…ジュエルシード収集のために競い合い、
それぞれの目的のために争いあう間柄だったころのことを思う二人。

フェイトはその時のことを思い返し、

「強い意志で自分を固めちゃうと、人の言葉はなかなか入ってこないから…」とつぶやく。

フェイトは母であり、自らの創造主でもあったプレシアの命に従い、
厳しい命令を下しながら、娘であるはずのフェイトのことを振り向きすらしない冷たい母の虐待に耐えながら、
それでも母のため、自分のためと信じ、ジュエルシードを求め、なのはやクロノたちと戦っていた。
プレシアの目的は、自分の「本当の娘」アリシア・テスタロッサの復活であり、フェイトはアリシアを元に作られた人造生命であることを告げられ、その時にもなお、自分の思いを捨てきることはできなかった。

当時を思い、切ない表情を浮かべるなのはに、フェイトは慌てて
「言葉をかけるのは、無駄じゃないよ」と伝える。

戦いの中で、なのはが何度もフェイトに伝え、語りかけた言葉。

友達になりたいという言葉。痛みも悲しみも、分け合いたいという思い。

そんな思いと言葉があったから、フェイトは最後の最後で自分を取り戻すことができ、

冷たくなった娘と共に死地へと旅立とうとする母に、自らの偽りない思いを伝えることができた。

そして、今はこうしてなのはと共に語らうことができるようになった。

「思いを言葉にして伝えること」それは二人が共通して持つ、強い信念だった。

そして、思いを伝えるのに「戦い」と「勝利」が必要なら、きっと迷わずに戦うことができる。

それを教えてくれたのはなのはだと微笑むフェイトに照れるなのはだが、二人の思いは、静かに固まる。今度は勝てるよう、もっと強くなること。

それは思いを貫くための、強い決意だった。 

岩場の異世界では、ヴィータとザフィーラが原住生物を倒し、リンカーコアを収集していた。

負傷したヴィータだが、それを気に留めた様子もなく次に行こうとするのをザフィーラが心配する。 

「あたしだって騎士だ、この程度で疲れるほどヤワじゃない」と強がるヴィータに、静かに付き従うザフィーラ。

そして、一週間後。なのはのリンカーコアは無事に完治。そして、レイジングハートとバルディッシュも修理と部品交換を終えて、二人の手に戻ってくる。

一方、収集から帰還中のヴィータとザフィーラは管理局に補足され、局の捕獲結界内で武装局員に取り囲まれる。返り討ちにしようと息巻くヴィータ。

クロノの攻撃を軽傷でしのいだ二人。戦闘開始のその刹那、なのはとフェイトが現場に駆けつける。

それぞれのデバイスを起動させるなのはとフェイト。

だがその時、溢れる魔力の奔流と共に、新たな鼓動が二人を包む。

エイミィからの通信で、レイジングハートとバルディッシュは、それぞれの主人のために
自ら望んで、自らの意志で新たなシステムを搭載したことを告げる。

そしてなのはとフェイトは、新たに生まれ変わった自分のデバイスの名を呼ぶ。

レイジングハート・エクセリオン。

バルディッシュ・アサルト。

6連装カートリッジシステムを搭載し、新たな姿となった二基。

二人のバリアジャケットもそれぞれ強化型へと変化。
いま、二度目の戦いが始まろうとしていた。

 
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