ILLUST STORY
#9夜海トワ-蒼炎
夜海トワの心の中では、消えない炎が渦巻きつづけている。
かつて「友達になれたかもしれない」少女を食らって奪った黒い炎に
今日は「友達だった」少女から奪いかけ、トワの魂の形に再構築された炎――蒼い炎が加わった。
戻れなくてもかまわない。
トワが消し去ると決めた「人を殺す魔人」には、トワ自身も含まれているのだから。
夜海トワの魔人能力「暴食」の本質は「捕食した魔人の固有能力の複製と再構築」にある。
これはトワの魔人としての肉体の特異性に依存するもので、他者がこの「暴食」を獲得することは不可能に近い。
それはトワの実感であり、かつて篠宮ラボの研究チームが下した決断でもあった。
同様に、空港を焼いた「炎の魔人」――日渡ナツキの他数名が獲得に成功した「黒炎」も、体質依存の能力だった。
無限に再生する自分の肉体を燃料として激しい炎と熱を生み出す。それは命を、残りの寿命を直接燃やすことで生まれる力だった。
日渡ナツキと交流をほとんどできなかったトワは、ナツキの心を知ることができない。思いを馳せることも難しい。
優しい子だった記憶はある。周りの子供達を気にかけていた。
帰りたがっていた、平和な日常に戻りたいという思いがあったこともわかっている。
そんなナツキを救うことができず、自ら手にかけたのはトワ自身だった。
それまでの実験と空港火災で使われた火力を思えば、仮に生きながらえたとしても残りの寿命はわずかだっただろう。
しかし、それでも。
同じ痛みを抱いていたはずの同胞を、自らの意志で手にかけた罪。
化け物の自分を家族として愛してくれた両親を救うことができず、自分だけが生き延びてしまった罪。
それらの罪を死ぬまで背負ってゆくことを、トワは自らに課している。
自分を異形の怪物に変えてでも、誰に憎まれてでも、魔人と魔人化薬をこの世界から消し去る。
それがトワの「復讐」だった。
大切な人や、大切な人になったかもしれない子を救えずに、目の前で死なせてしまった。誰も救えなかった。
その事実に対する自分自身への応報として、トワは銃火の中に身を置いている。
夜海トワの心の中では、消えない炎が渦巻きつづけている。
かつて「友達になれたかもしれない」少女を食らって奪った黒い炎に、
今日は「友達だった」少女から奪いかけ、不完全なままトワの魂の形に再構築された炎――蒼い炎が加わった。
宿敵に辿り着けた死地から、平和な場所に戻りたいとは思わない、戻れるとも思わない。
「魔人は殺す」
トワが口癖のように話すその言葉の通りに。
トワが消し去ると決めている「人を殺す魔人」には、トワ自身も含まれているのだから。

