8月17日(木)、東京の新宿ピカデリーで、大ヒット上映中『魔法少女リリカルなのはReflection』のスタッフトーク付き上映会が開催された。
登壇者は、統括プロデューサーの三嶋章夫さん、アニメーション制作プロデューサーの畑中悠介さん、監督の浜名孝行さん、総作画監督の新垣一成さん、総作画監督の坂田理さん。
本編上映前のイベントではあったものの、公開から1か月近く経っていることもあり、事前の告知通りにネタバレも含む制作秘話が語られていった。
司会の新井プロデューサーから、来年公開予定の『Detonation』との前後編という形になった経緯について質問を受けたのは、三嶋統括プロデューサー。
三嶋「約5年前、『The MOVIE 2nd A's』を上映させて頂いた時には、すでに(原作&脚本の)都築(真紀)さんの書かれた、3作目に関するプロット(シナリオの前段階の草案)がすでにあったんです。その段階ですごい手応えを感じていたのですが、非常に膨大なボリュームのお話だったので、これを1本の映画として丸々やると、途中でトイレ休憩が必要な長さになるなと(笑)。だから、最初から前編と後編に分けたいという構想はありました」
本作で初めて『なのは』シリーズに関わることになった浜名監督。オファーがあったときには、光栄さと同時に大きなプレッシャーも感じたとのこと。「過去のシリーズから意識的に変えたところはありますか?」という質問への回答からも、長い歴史を持つ『なのは』シリーズや、それを愛してきたファンへのリスペクトが感じられた。
浜名「ご覧になった皆さんが、どのように感じたかは分かりませんが、自分としては、何かを変えようというつもりはなく、わりとスタンダードに作ったつもりです」
作画のクオリティー維持の肝となる総作画監督を務めた、新垣さんと坂田さんには、「特に大変だったことはありますか?」という質問が。
新垣「新規のデバイス、新規のキャラクターデザイン、新規のバリアジャケットなどには、最初のうちは慣れなくて苦労しました。特に僕は『なのはINNOCENT』というソーシャルゲームの原画をずっとやってたこともあって。そのラインの絵になれてしまっていたので、そこから今回の絵に切り替えていくのが、すごく難しかったです」
坂田「個別のキャラで言うと僕はキリエに苦労しました。自分で『毛がモジャモジャで冴えない子』と言ってるのに、髪の毛がぺったりしていると矛盾してしまうので、髪のボリュームに気を付けました。あと、僕は途中から参加したのですが、なのはの絵が今ひとつ上手く描けないなと思っている時、キャラクターデザインの橋立(佳奈)さんから、「もみあげの長さと太さに気を付けると良いよ」とアドバイスを頂きました。それは、この作品のキャラ全体に言えるポイント。もみあげの崩れは分かりやすいので、キャラクターを修正する際は、そこに気を付けました」
メインスタッフの手配、制作現場の管理、ストーリー全体のボリュームコントロールなどを担当したアニメ制作プロデューサーの畑中さんは、「今回一番苦労したことは」という質問に、まずは「ボリュームのコントロール」と回答。
畑中「最初はボリュームが非常に大きかったので、それを予算とスケジュールの範囲内にどう収めていくかが大変で、ちょっと時間がかかってしまいました。都築さんと浜名監督にシナリオやコンテを上げていただいたのに、『すみません。ちょっと削っていただけないですか』とお願いしたんです。最初のシナリオからは2割か3割くらい削っていただいてなんとか100分という尺に収めました」
また、劇伴(BGM)や主題歌も『なのは』シリーズの大きな魅力。本作では、劇伴の曲を発注する段階では音響監督が決定しておらず、浜名監督自ら、劇伴を作曲した中條美沙さんと打ち合わせをしながら、方向性を決めたそうだ。
浜名「今回、アクションシーンが山のようにあって。バトルが終わったら、またすぐバトル、という感じなので、ずっと激しい曲で良いのかと悩みました」
そして、水樹奈々さんのプロデューサーでもある三嶋統括プロデューサーには、主題歌『Destiny's Prelude』と挿入歌『Invisible Heat』に関する質問が。
三嶋「映画になって以降の主題歌と挿入歌は、コンペという形で、大勢の作家さんに書いてもらって、その中から選んでいます。今回は300曲近くあったのですが、『Destiny's Prelude』は、その中には無かった曲なんですよ。でも、加藤裕介君という作家さんが一番『Reflection』の曲に近いものを上げてきてくれて。奈々ちゃんとも話した上で、もう一度、加藤君に書き直してもらってできたのが『Destiny's Prelude』なんです。聴いた瞬間、『Reflection』の風景が浮かんで泣いちゃいました。『Invisible Heat』は300曲の中にあった曲です。フェイト×レヴィ戦で流れる曲なのですが、リンディさんも出てくるシーンなので、どこか母性も感じられる曲ということで選びました」
トークショーも終盤に突入したところで、坂田総作画監督から、ぜひ伝えたい事があるとアピール。それは、なのはたちが八神家を訪れるシーンで、土足のままスリッパを履いていることについての真相。ネット上では作画ミスとの指摘も受けているが、あのスリッパは、土足のまま履ける「オーバースリッパ」。その後、八神家経由で異空間へ移動するため、靴を履いたままでも部屋に入れるようにという、八神家の優しさだという。
「『Detonation』について、現時点で言える見どころは?」という最後の質問には、畑中プロデューサーが「前編があのような終わり方をしているので、なのはのパワーアップした戦闘を楽しみにして欲しい」と回答。司会の新井プロデューサーは、「もう少し突っ込んだコメントはないですか?」とさらに追求したものの三嶋プロデューサーは、「あまり聞かない方が良いと思う(笑)」と、ファンの楽しみを守るために、あえて回避。しかし、最後の挨拶で浜名監督から「『Detonation』もアクションシーンが山のようにあります」と少しだけヒントが追加。『Reflection』以上に熱く濃い作品となるのは間違いなさそうだ。
トークコーナーの後は、来場者を対象にした抽選会。三嶋プロデューサーが「なのは史上最大のプレゼント」と話した通り、賞品は超豪華。特に、3人の総作画監督が1枚ずつ描いたイラスト付きのサイン色紙がスクリーンに映されると大きな歓声が上がっていた。
『なのは』では初の試みとなったスタッフトークイベント。三嶋プロデューサーによると、今後は、こういった形でいろいろなスタッフが『なのは』について語る機会を増やしていきたいとのこと。
2018年上映予定の『Detonation』だけでなく、次の『なのは』スタッフトークイベントの開催も楽しみにしていて欲しい。